小林清志さんの次元大介役ご勇退について個人的に思ったこと

2021年9月6日、高齢を理由に小林清志さんの次元役「勇退」が発表されました。後任は大塚明夫さんとなり、アニメ放送50周年記念として同年10月9日放送開始予定の『ルパン三世 PART6』にてプロローグにあたる「EPISODE 0 -時代-」が小林清志さんが演じる最後の次元となるとのことです。
小林は、視聴者と後任の大塚に対し、以下のメッセージを記されました。
ルパンは俺にとって一生ものの仕事であった。命をかけてきた。
我儘を言えば90歳までやっていたかったが残念。
何とかかじりついていたかったが 無理だった。
歳をとればそれなりの深みが出てくるはずだ。ただ映像とのギャップがあるか。
話は違うが以前、明夫ちゃんに聞かれたことがある。
「なぜ親父は五ェ門を辞めたんでしょう?」と。
親父とは大塚周夫先輩である。答えに窮したことがある。
さぞ先輩も 無念だったにちがいない。
一部の方々から言われる事があるのは、次元は歳をとった 聞きづらい。
当たり前だ わたしゃ 齢88歳であるぞ。俺なりに努力した結果だ。
これからはそう言われることを気にしないですむ。ほっとしている。あとは明夫ちゃんに委ねます。
頑張ってちょうだい。
ただ、次元はそんじょそこらの悪党とは違うぞ。
江戸のイキというもんだ。変な話だが、次元は江戸っ子だ。
明夫ちゃん、これは難しいぞ。
雰囲気はJAZZにも似ているんだ。最後に
これまで応援してくれた人たちにお礼を申し上げる。ありがとうございました。ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。
あばよ。
— 小林清志
この報道を目にしたとき、
「あぁ、遂にこの日が来たか。」
と思いました。
1969年にルパン三世のパイロットフィルムが製作されたとされるため実に52年前から次元大介という役を演じられた小林清志さんのご勇退です。

いちルパン三世、次元大介、小林清志さんのファンとしてはアイドルオタクの「推しをの喪失」のような心境になりました。
ただ、実際は2014年に公開された「次元大介の墓標」のあたりから小林清志さんのご勇退については覚悟をしていました。

理由としては、2014年の当時としても小林清志さんはすでに約80代の高齢であり、この作品自体が「ルパンたちの若き日」を描いた作品だったためです。推定20代の次元大介を約80代の小林清志さんが演じる必要があったのです。
実際、作品が予告されてからしばらく「次元含め、声優陣が発表されない時期」がありました。
おそらく、オーディションを行っていたのだと思うのですが問題は主役の次元の声だったのでしょう。
賛否はありましたが、この2014年時点の小林清志さん演じる次元は良かったと思っています。
本人も仰っていますが、「年齢を重ねる事で出せる渋み」が良い方向に表現されていたと感じたためです。
(それでもやはり20代の次元を演じるのは無理があると感じる場面もありましたが、小林清志さんの演技力が勝りました。)
時は流れ2018年。
ルパン三世のPart5 が放映されました。
実際に音声収録が行われたのは2017年~2018年ごろかと思います。

こちらについても次元役は小林清志さんが演じられているのですが、個人的には「正解」だったと思います。
やはり小林清志さんが望まれる限り、ご存命の限り「小林清志さん演じる次元を聞いていたい」という個人的な感情故の感想です。
一方、かなり無理を感じるシーンも多々ありました。
「7.62mmのミラージュ」の回で、若き日の次元を演じるシーンがあったのですが、BGMがなく温泉編集の悪く言えば「ごまかし」が聞かない状況では完全におじいちゃんでした。
批判ではありません。

ただ、個人的にしんどいと感じたシーンはそのくらいでした。
「その時、古くからの相棒が言った」の次元がルパンに引退を勧めるシーンは小林清志さんでなければいけなかったと思います。

さらに時は流れ2019年。
テレビスペシャルの「プリズン・オブ・ザ・パスト」と初の3DCG映画「ルパン三世 THE FIRST」が公開されました。


ルパン三世 THE FIRST は先に音声収録が行われたため、音声収録の時系列としては 「プリズン・オブ・ザ・パスト」 の方が後と考えられます。
こちらについては「ルパン三世 THE FIRST」については若干映像とのギャップを感じる程度でした。
(やはり3DCGとなると次元の若い見た目とのギャップが目立ちます)
問題は 「プリズン・オブ・ザ・パスト」 の方です。
こちらの次元についてはお世辞にも「良い」とは言えなかったです。
小林清志さんのコンディションが良くなかっただけかもしれないですが、当時「次元の声がおかしい」とTwitter でトレンドになる程度には老化が進まれていたと感じました。
なぜご勇退されることになったのか
正式なリリースでは「ご高齢のため」と発表されており、これは紛れもない事実だと思います。
となると、この小林清志さんのご勇退は小林清志さん本人からの申し出だったのでしょうか。
実際に2019年のモンキーパンチ氏のご逝去の際には
「どうぞ 栗田貫一はじめ いま在る戦友たち そしてルパン三世に関わる仲間と共にもう少しこのめくるめくルパン三世の世界で遊ばせておいてください」
「駄目になったら自分から(次元役を)やめる」
と意欲的なコメントを残していました。
私が思うに、小林清志さんご勇退の判断をされたのは製作陣であったと考えております。
明確な根拠はないのですが、ご勇退の際のコメントで
我儘を言えば90歳までやっていたかったが残念。
何とかかじりついていたかったが 無理だった。
というネガティブ寄りなコメントを残していることから、オーディションの結果、ご勇退が決まったのではないかと考えています。
ただ、製作陣の立場からしても小林清志さんご勇退のタイミングの判断はかなり難しかったと思います。
- 小林清志さんご存命の限り役を続けて頂きたいという気持ち
- 映像と声のギャップ
- ルパン三世50周年という区切りの良さ
- 小林清志さんの体調が1クールの収録に耐えないほど実は芳しくない?
(もしかしたら、1話収録時点で「無理」と判断された可能性もあるかと思います) - (非常に不謹慎でありますが)突然逝去された場合の後任決定リスク
など、様々な要因があったのだと思います。
(勝手な、個人的な予想を含みます)
特に、1クール中の収録を残して突然ご逝去されてしまった場合、後任決定をどうするかという問題になります。
これは、山田康雄氏がノストラダムスの収録中に亡くなったことを踏まえても避けるべきと考えられたのではないでしょうか。
なぜ後任が大塚明夫さんになったのか
小林清志さんご勇退の件とは少し逸れますが、なぜ後任が大塚明夫さんになったのでしょうか。
単純にオーディションで決まったんでしょうが、
- 津田健次郎さんがいい
- モノマネ声優を起用してはどうか
という意見もありましたが、津田健次郎さんはアルベール役で出演されるため駄目だろうとは思っていました。
また、モノマネ声優の起用については山田康雄さんが亡くなって栗田貫一さんがルパン三世役に起用された実績があるため期待されたのかも知れませんが、個人的にはあり得ないと思っていました。
1995年のノストラダムスで栗田貫一さんが演じられた際、結構な批判があったらしいです。
当時はSNSはおろかインターネットすらあまり普及していない時代ですら批判されたのに、このSNS全盛期にそのような炎上リスクを取るよりは、誰もが納得する大御所の起用が無難と言う判断です。
また、大塚明夫さんがすでに還暦と言う意見ですが、ルパン三世役の栗田貫一さんと銭形警部役の山寺宏一さんも年齢が近いため、もしルパン三世がさらに長期にわたり続いて更なる声優陣の交代が必要になった際も一斉交代が可能になるためあまり問題でないということでは無いでしょうか。
また、最近の声優さんであれほどの渋さを出せる方も多くはないと思いますし。
立木文彦さんや銀河万丈さん(銀河万丈さんは「風魔一族の陰謀」で1回だけ次元役やってる実績もありますし)もアリかとは思いましたが、小林清志さんのイメージに引っ張られたのかと思います。
また、こじつけというか奇跡というべきか、初代石川五ェ門(テレビ1STシリーズ)を大塚明夫さんの実の父である大塚周夫さんが演じられていたという事実もあります。
親子2代に渡りルパン三世シリーズに携わるのは本当に面白いですよね。
(1stシリーズの次元は当然小林清志さんが演じられています。)

本当に、本当にありがとうございました。
私事ですが、私はルパン三世という作品が大好きでした。
それこそ20年近くのファンであります。
特に次元大介というキャラクターはルパン三世の作品の中でも一番好きなキャラクターであり、憧れでもありました。
これは小林清志さんという最高の俳優さんがいらっしゃったことに尽きるかと思います。
実に半世紀に渡り次元大介という役を演じ、楽しい作品をたくさん提供して頂き本当にありがとうございました。
ぜひこれからも長生きされて、声優としてご活躍されて欲しいといちファンとして切に願います。
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